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頭痛への治療戦略

片頭痛の新しい予防療法は?

聖マリアンナ医科大学神経内科では,週に一日頭痛専門外来を設け,一次性頭痛の代表である片頭痛や群発頭痛を対象に積極的な治療を行っています.片頭痛に対する治療には,主にトリプタン系薬剤(本邦で使用可能なのは,スマトリプタン,ゾルミトリプタン,エレトリプタン,リザトリプタン,ナラトリプタンです)などを用いる急性期治療と、片頭痛発作の頻度・重症度・持続時間の軽減目的で抗てんかん薬,抗うつ薬,降圧薬(β遮断薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬),NSAIDsなど非特異的な治療ターゲットを有する薬剤を定期的に用いる予防療法がありますが,当院ではこの予防療法に力を入れて診療を行っています.また予防療法のひとつとして,カンデサルタンなどのアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬やオレキシン受容体拮抗薬による有効性の報告もされており,当院においてもアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬と利尿薬の合剤であるECARD®による片頭痛予防療法の有効性を報告しています.

最近のトピックスとしては,片頭痛の予防療法としてCGRP受容体拮抗薬が注目されています.片頭痛発症には三叉神経血管系の活性化が関与し,結果として三叉神経終末から炎症を起こすカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide;CGRP)が放出されます.また片頭痛患者にCGRPを投与すると発作そのものが誘発されることからもCGRPは片頭痛の発症に重要な働きをしていることが明らかとなっています.このためこのCGRP受容体拮抗薬による片頭痛予防効果を証明するための臨床試験が全国の特定の病院で開始されています.参加施設については,かかりつけ医または当院神経内科までお問い合わせください.(秋山久尚)

(文献 Akiyama H, Hasegawa Y. Migraine treated using a prophylactic combination of candesartan and hydrochlorothiazide (ECARD® Combination Tablets LD). Pain Practice 13(7): 566-571,2013.)

片頭痛の新しい予防療法

あなたの頭痛の苦しみは会社で理解されている?

慢性頭痛を持つ日本人は約3000万人とされていますが,医療機関で頭痛の適切な診断や治療を受けている割合は驚くほど少ないのが現状です.この原因のひとつとして,企業における管理職が頭痛を重要な病気と理解せず,医療機関への受診を妨げている可能性があります.このため私たちは,医療系企業における管理職の頭痛に対する理解度について調査しました.全国の医療系企業において管理職への頭痛アンケート実施が承諾された15社に対して、2008年7月に任意参加式のアンケートを実施しました.男性1151名,女性59名の合計1210名(平均年齢46.6±5.7歳)から回答が得られ、管理職の背景としては1013名(83.7%)が自身に頭痛はありませんが,片頭痛(98.1%)や緊張型頭痛(68.0%)の頭痛名称や片頭痛による“仕事や家事の能率低下”(86.2%)を認識していました.また片頭痛の症状として,女性に多い(70.2%),嘔気を伴う(67.8%),光・音過敏(59.8%),体動による増悪(58.8%)を認識していました.片頭痛治療薬の存在については,トリプタン系頓挫薬を64.6%が知っていましたが,予防薬については49.0%にとどまっていました.頭痛で度々休む社員がいた時の管理職としての対応については,“医療機関への受診を勧める”が90.3%である一方,“我慢して出勤し働いてほしい”や“社会人としての自覚が足りない”が10.6%でした.受診先は,産業医ではなく病院・クリニックが多く,59.8%が神経内科医、29.4%が脳神経外科医への受診を勧めるとの回答でした.しかし実際,37.7%が頭痛持ちの社員の有無を把握できていませんでした.この結果,医療系企業における管理職自身は頭痛を持っていなくとも,慢性頭痛の日常生活への支障度や症状を理解していることがわかりました.頭痛持ちの社員は管理職へ積極的に相談することで,安心して医療機関を受診できる体制に既になっていると思われましたが,管理職が頭痛持ちの社員が本当にいるのかまでは把握できていないことが示されました.また,企業内の産業医の利用も更に促進すべきと考えられました.(秋山久尚)

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(文献 Akiyama H, Hasegawa Y. Corporate Understanding of the Significance of Headache: A Survey of Managers of Japanese Pharmaceutical and Health-related Companies. International Journal of Pain 4(1): 8-14, 2013.)

どのような頭痛患者が大学病院を受診している?

近年,頭痛の早期受診についての啓発活動が盛んに行われ,頭痛を主訴に初めて大学病院を受診する患者の特徴を確認しておくことは,今後の啓発・診療活動に役立つと考えられます.2012年7月から2013年3月までに当院神経内科外来へ頭痛を主訴に初めて受診した患者の頭痛問診票615例の内容を検討しました.患者の年齢層は40-49歳と30-39歳が各々122例(19.8%),119例(19.3%)と多く,女性が360例と男性の1.4倍でした.職業別では会社員が143例(29.9%),無職が109例(22.8%)で,頭痛の罹病期間は10年以上が131例(22.7%)と最多で,次いで1-2か月が95例(16.5%)でした.頭痛の頻度は5-10回/週が164例(35.5%)で,1-2回/週が95例(20.6%)と続き,部位は左側が165例(39.6%),両側が138例(33.1%)で,後頭部230例(20.6%)とこめかみ183例(16.4%)が多くみられました.頭痛の性状は視覚前兆なしが419例(78.5%)で,脈打つ頭痛が319例(38.1%),押される頭痛が180例(21.5%)と多数を占めました.また,頭痛が日常生活に支障ありは292例(56.5%)で,随伴症状として肩や首の凝りが342例,嘔気が200例を占めていました.頭痛出現時の対策は「じっとして痛みが治まるのを待つ」が366例(52.7%)で,頭痛薬服用者は332例(58.7%)で,女性に多くみられました.頭痛薬の内容はロキソニンが159例,バファリンが125例,イブが89例で,トリプタン製剤は65例でした.この結果,頭痛の早期受診についてさまざまな啓発活動が行われていますが,頭痛を主訴に大学病院を初めて受診する患者の特徴として,30-49歳の女性会社員が,病院処方薬(ロキソニン・トリプタン製剤)や市販薬(イブ)の長期使用後も,日常生活に支障を来たすような長期間にわたる頭痛が高頻度にあるため受診するスタイルが未だに多いことが明らかとなりました.(秋山久尚)

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